Thursday, June 30, 2011

華琶夜のなみだ

淡く凍て付きたる雪原有り、夜も更けて月朦朧と暗香を放つ、孤狐も帰途の路を馳せて涙ぐみたる、扉を幾張開けども永久(とこしへ)に夜、言の無き華火は雪ノ一粒一粒より出で来る

此のやうな孤独を味わつたことがあつたであらうか。北辰も見えず四海蒙昧として、チラチラとした炎のやうなものだけが瞼ノ裏側で瞬きては、地中深き時間の陰に身を倚せてじッと動かずに居。窗外に降り積もる雪の重なり合ふ聲を聴。

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